A – N°3

だれ一人も自分の選択を否定することもできないし、もうひとつの選択肢と比較することもできないし、だから折り合いをつけて無意識のうちに自分を納得させているということはあるけど、だいたいの時間は選択しなかった方ばかり考えてしまうし、悲観的になってしまう。選ばなかった方の次の次に起きうることくらいまでは考えが及ぶけど、そうしているうちにも自分の選択の前には次の新たな選択が押し迫ってきているわけで、思考にも時間にも限りがある。

でもそもそも選択できる権利を得ることも価値のあることなんじゃないか。自分に選択肢がある状態で隣の人を見ると、選択権がなく自分がこれから選ばないであろう方の選択を行かざるを得ない状況にある人もきっといるんじゃないか。選択権がある時点で劣悪な方にはほとんど行かないのだから、それ自体をもっと大切に尊ぶべきで、そうなれない者のことを意識するべきなのかもしれない。だけど人は時にその権利があるのに、敢えて劣悪な方を困難な方を選ぼうとすることもある。

世の中のだいたいは、何かになれなかった人や、何かをしなかった結果の集まりなんだと思わざるを得ない状況に遭遇することがある。