étude

a. いつだったか、自分よりひとまわり上の年齢の人から聞いた話。彼らがまだ若く新人として働いていた頃、彼らからさらにひとまわり上の世代の人たちから「君たちはバブルの時代を知らずに就職してきたわけだが、あの時代を知らないのはもったいない」と言われたそう。彼らはその時、このオッサン達より充実した時間を過ごそうと、泡になって弾ける水物に惑わされぬ大人になろうと思ったらしい。それから十数年経ち、彼にとって「充実」とは「大人」とは。僕はそれを聞いた当時、「充実」とは「大人」とは何だと感じたんだろう。何世代もの反面教師を交互に繰り返していった結果が巡り、今の自分の思想や姿勢を少なからず形づくっているということもある。

b. ネットレーベル関連のインタビューをいくつか読んだことがあるが、聞き手の話の進行が意図的にそうしているのかは定かじゃないが、多くの文章から感じるのは自分自身で始めて・広めて・楽しむことに必要以上に重きをおいた話題の導線や、やりたいこと・楽しめることが出来なくなるくらいなら無理はしない雰囲気。時代の移り変わりを受けての世代同士の持つ感覚についても、よく言及されている印象。ネットが発達していった結果、家内制手工業でかつ村社会のような構造を理想とする風潮というのがあるのだろうか。そんな状況を見ている今の中学校くらいが、別のことを考えて世の中は巡っていきそう。

c. 過去の仕事をポートフォリオにまとめて公開したのだが、その後の短い期間で3つの会社から、所属クリエーターとしてマネジメントするという種類のコンタクトがあった。結果今も個人経営のままなのだが、せっかくなので話はそれぞれに聞かせてもらったりした。そのうちのひとつの話。なにか野望めいた規模のものを作ろうと思い立った時に、いちばん避けるべきことは1人で勉強してコツコツ始めようとすることらしい。考え方は全く逆で、まずは支援してくる人をとにかく募ってお金を集めるのだという。理屈は分かるが感覚では理解できなかった。同じように聞いて「なるほど」と思える同年代はどれくらいいるんだろう。b.の人たちはどう感じるんだろう。

d. 東京オリンピックの開催是非の世代ごとの声は、一般的には若者ほど賛成が多く、年配者ほど反対が増えていくと聞く。ワイドショーでよくある「そんな税金あったら待機児童云々」というフレーズも、自分の身としてリアルに感じれる若い人は少ないのだから当然といえばそうだ。僕らにはまだ家計という概念が薄い。でもそれとは別に、バブルに匹敵する刹那的な盛り上がりをどこか待ち望んでいるようにも思える。

e. 窪塚洋介・常盤貴子主演のドラマ「漂流教室」は3周くらい見ていて大好きなんだが、あの時の生徒役の粒揃い感すごいなと毎度思う。今はドラマ自体全然知らないんだが、そういう粒揃い感って誰に当たるんだろう。俳優のこの世代すごいって思う対象って、自分より5~8歳くらい上なのかな。

f. 大学生の頃から感覚が変わらず、当時思い描いていた大人になったという気が薄いという話、よく聞くけどそれを年下に持ち込んで来られるときっと厄介だと思う。変わらぬ若い感覚で同じ目線になって気軽にアドバイスなんかしてると、相手は大人の有難迷惑な説教にしか聞こえないのではないか。